新しい評価・報酬制度を導入したものの、「評価に納得できない」という声が、社員からもマネージャーからも少しずつ上がり始めていました。
社員からは、「なぜこの評価なのかが分かりにくい」。
マネージャーからは、「どう説明すれば納得してもらえるのか分からない」。
制度そのものに大きな問題があったわけではありません。しかし運用の現場では、「評価が伝わらない」「腑に落ちない」という感覚が積み重なっていました。
そこで改めて見えてきたのは、制度の設計そのものよりも、「評価がどのように運用され、対話されているか」が、納得感に大きく影響しているということでした。
そこで選んだのは、「制度を作り直す」ことではなく、「運用を整える」というアプローチでした。
新たな制度を再び導入すれば、現場にさらなる混乱や負荷が生まれる可能性があります。
そのため今回は、既存の制度を活かしながら、本来目指していた評価の目的に近づけるために、運用プロセスや対話のあり方を見直していきました。
一気に仕組みを変えるのではなく、現場の納得感を少しずつ積み上げていくことを大切にしました。
今回の取り組みでは、主に以下のテーマを中心に運用改善を進めていきました。
特に評価キャリブレーションでは、部門長やマネージャーが集まり、評価基準や判断の背景について対話する場を設けました。
「なぜこの評価になるのか」を言葉にしながら整理していくことで、評価の一貫性や公平性についての共通理解が少しずつ生まれていきました。
興味深かったのは、評価キャリブレーションが、単なる評価調整の場にとどまらなかったことです。
対話を重ねる中で、マネージャー自身が、自分の評価傾向や判断のクセに気づき始めました。
そうした違いを共有することで、評価基準だけではなく、マネジメントの考え方そのものについても対話が深まっていきました。
さらに、
といった具体的なケースについても意見交換が行われ、部門を超えて学びが広がっていきました。
評価をすり合わせる場が、結果として「マネージャー同士が学び合う場」へと変化していったのです。
実際にマネージャーからは、次のような声が上がるようになりました。
当初は、「他部署の状況は分からない」と参加に消極的だったマネージャーも、対話を重ねる中で、少しずつ他者の視点を取り入れるようになっていきました。
評価について話し合うことが、結果として「マネジメントの質を揃えていくこと」につながっていったのです。
今回の取り組みは、まず部門単位からスタートしました。
現場に近い単位から始めたことで、実際の運用課題やリアリティに沿いながら改善を進めることができました。
評価への理解や納得感が少しずつ高まる中で、現在は、全社レベルでのキャリブレーションや、後継者育成、報酬制度の見直しへと議論が広がり始めています。
制度は、一度作れば終わるものではありません。
どのように運用され、どのような対話が行われるか。その積み重ねが、評価への納得感や、組織全体のマネジメントの質につながっていきます。
もし今、
そんな感覚があるのなら、制度を作り直す前に、まずは「運用のどこにズレが生まれているのか」を整理してみることが、次の改善につながるかもしれません。