組織の中で、互いにフィードバックを伝え合うために、さまざまな取り組みが行われています。
能力開発や人材育成の文脈でも、周囲からのフィードバックは重要な要素として位置づけられており、他者の視点を通じて自分を客観的に見つめ直すことで、内省が深まり、成長が加速すると言われています。
一方で、フィードバックには不安や恐怖といったネガティブな感情がつきものです。
上司から「少しフィードバックをしたいのだけれど」と言われただけで、「何か叱られるのではないか」と身構えてしまう部下は少なくありません。
その結果、オープンな姿勢でフィードバックを受け取ることが難しくなり、本来意図していた成長支援とは逆の結果を招いてしまうこともあります。
フィードバックの伝え方については、SBIモデル(Situation:状況、Behavior:行動、Impact:影響)などを活用し、客観的な事実に基づいて伝えることの重要性がよく語られます。
もちろん、それ自体はとても大切です。
しかし現場では、「何がダメなのかを明確に伝えているはずなのに、行動が変わらない」あるいは「むしろ、その行動が増えているように感じる」という声も少なくありません。
これは、伝え方の問題というよりも、人の心理的な反応に起因しているケースが多いように思います。
人は、「その行動は良くない」「やめたほうがいい」と指摘されると、
といった反応を起こしがちです。
場合によっては、「自分はこれで間違っていない」という歪んだ自己肯定につながり、かえって同じ行動が強化されてしまうこともあります。
つまり、「何がダメか」だけを伝えるフィードバックは、 成長や成果につながりにくいのです。
ここで重要になるのが、フィードバックの意図とあわせて、「どのような行動が理想なのか」を明確に伝えることです。
フィードバックは、相手を正すためのものではなく、相手の成長と成果を支援するためのもの。
その前提に立ったうえで、次の3点が重要になります。
このように伝えることで、フィードバックは「否定」から「次の一歩を示すナビゲーション」へと変わっていきます。
どれほど丁寧に理想行動を示しても、それが受け取られるかどうかは、日頃からの信頼関係に大きく左右されます。
そうした信頼の積み重ねがあるからこそ、改善を求めるフィードバックも「攻撃」ではなく「支援」として受け取られるようになります。
実際には、フィードバックを重ねても改善が見られず、最終的に「この役割は合っていないかもしれない」と伝えざるを得ない場面もあります。
そのような厳しい状況においても、建設的に今後を話し合えるかどうかは、それまでに築いてきた信頼関係にかかっています。
日常的に、
を丁寧に伝え合えている組織では、困難なテーマに直面しても、前向きな対話が成立しやすくなります。
こうした積み重ねは、組織の成果や業績だけでなく、
にも大きな影響を与えていきます。
フィードバックを成長と成果につなげるために必要なのは、テクニックやフレームワークだけではありません。
重要なのは、
この土台があってはじめて、フィードバックは「怖いもの」から「人と組織を前に進める力」へと変わります。
縁あって共に働く仲間の成長を、フィードバックという形で支援できるようになること。
それは、部下のためだけでなく、フィードバックを行う上司自身にとっても、より豊かで意味のある経験になるのではないでしょうか。